「くだらない質問」は、人の輪郭を浮き彫りにする。
本記事では、そんな「くだらない質問」ネタをいくつか紹介してみる。
無駄な質問は、要所においては、会話の潤滑油になり、少し美しい。
くだらない質問リスト
- 好きなパンは何ですか?
- 好きなひらがなは何ですか?
- 好きなドアノブのタイプは?
- 好きな必殺技は何?
- 一番信用してる野菜は何ですか?
- 靴下って左右あると思いますか?
- カレーは飲み物ですか?
- コンビニでつい見ちゃう棚はどこ?
- 最近なぜか気になった言葉は?
- もし冷蔵庫に住むとしたら、どの場所にする?
(普通の冷蔵室?チルド室?冷凍庫?) - 5円落ちてたら、拾う?
- トイレットペーパーはシングル派? ダブル派?
問いの背景にたいした意図はない。
が、答える側には不思議と「ちょっと考えてしまう時間」が生まれる。
会話のネタに困ったら、使ってほしい。
くだらない質問を投げるメリット
くだらない質問には、いくつかの効能がある。薬効成分はないが、効く人にはしっかり効く。
1.距離を縮める
「好きなパンは何ですか?」と聞かれてムッとする人間は少ない。よほど緊急事態でもない限り。
たとえ「フランスパン」と答えたとして、それが何かの思想的立場を表明するわけでもない。
政治も宗教も関係なく、人はパンについてならわりと素直に語る。
この無害さが、人と人の間にある「ちょっとした壁」を取り払う。
日々の会話においても、こうした無駄がもっと許されてもいいのではないかと思う。
2.相手の意外な一面が出る
「好きなひらがなは?」という質問に対して、即答で「む」と返してくる人間には、それだけで何かのストーリーがある気がしてくる。
くだらない問いには、相手の価値観がふとにじむ。
大げさに言えば、自己紹介より自己紹介になるのが「くだらない質問」である。
ちなみに、筆者の経験上、「好きなひらがな」を聞くと、たいがい、その人自身の氏名のどこかに使われている文字を回答するケースが多いと感じている。
3.自分のクセや傾向に気づける
「カレーは飲み物ですか?」と聞かれて、「いいえ」と答えたとする。
でもなぜそう思ったのかを考えてみると、自分の中のカレー観、あるいは飲み物とは何かという線引きに直面する。
このように、質問はくだらなくても、そこから見えてくる人間の輪郭は案外くっきりしている。
4.空気がやわらかくなる
たとえば初対面で「靴下って左右あると思いますか?」と聞いたらどうなるか。
一瞬しん…とするかもしれないが、その後、ちょっと笑いが起きる可能性がある。
そしてその笑いが、他社との関係性をまるごと変える。
ユーモアとは、正面からぶつかる代わりに、ちょっと横から回りこむ知恵。
「くだらない」とは、実のところ「すぐに役に立たない」というだけであって、価値がないわけではない。
筆者が答えてみた|くだらない質問で、ささやかな自己紹介
「どこの出身で」「何をしていて」「何が得意で」みたいな自己紹介も一応は便利だが、たいていは何ひとつ伝わらない。
それよりも、好きなひらがなとか、信用してる野菜とか、そういう取り留めない質問の方が、意外と人となりをにじませる気がする。
というわけで、以下は筆者による「くだらない質問」への回答である。お手柔らかに。
好きなパンは何ですか?
フカフカのパン。歯の圧力をほとんど必要としないやつ。フニャフニャ寄りならなお良い。
好きなひらがなは何ですか?
ぬ。間違いなく「ぬ」。
語尾でふと出てくると、場が少しゆるむ気がして好き。
もしくは「み」。丸みがあって、優しさの余白がある。
好きなドアノブのタイプは?
ちょっと冷たくて、軽い力でカチャッと開くやつ。握ったときに主張しないものがいい。人間もドアノブもそうであるべきだと思っている。
好きな必殺技は何?
左ピッチャーのクロスファイア。
ピンチの場面でズバッと決まると泣きそうになる。
一番信用してる野菜は何ですか?
ブロッコリー。
何があっても裏切らない感じがある。
蒸してよし、茹でてよし、黙ってても仕事してくれる。
靴下って左右あると思いますか?
ない。もしあるとしても、気づかなかった自分を責めるほどのことではない。
カレーは飲み物ですか?
はい。スープカレーに限らず、気持ちの上では常に「飲んでる」感覚。
コンビニでつい見ちゃう棚はどこ?
本棚。特に読む予定はなくても、とりあえずタイトルだけ眺めて安心したくなる。
最近なぜか気になった言葉は?
配当金。急にやたら聞くようになった。まだ実感はないが、語感はいいしロマンもある。
もし冷蔵庫に住むとしたら、どの場所にする?
普通の冷蔵室。チルドはちょっと寒そうだし、冷凍庫は完全に会話が通じなそう。冷蔵室の壁際あたりで、プリンに囲まれて暮らしたい。
5円落ちてたら、拾う?
拾う。拾ったあとはポケットに入れて、だいたい忘れる。
その後、洗濯機で回して、家族に怒られる。
トイレットペーパーはシングル派? ダブル派?
冬はダブル、夏はシングル。
というか、そのとき心に余裕がある方を選ぶ。たぶんそういう使い分けでいいのだと思う。
どうでもよさそうな問いほど、あとを引く
「5円落ちてたら拾う?」という質問に、はたして正解はあるのだろうか。
たぶんない。けれど、人によって即答だったり、ちょっと黙って考えたり、その差が面白い。
人間の思考には、時に“無意味な曲がり角が必要である。
目的地ばかりを目指して歩く旅は疲れるし、たまには道端に咲いてる名前も知らない花を見て「これなんだろうね」なんて言うのも、わるくない。
くだらない質問は、そういう花のようなものである。
効率化された社会ではあるが、効率の外側にもちゃんと場所はある。
そこに座って、「最近なぜか気になった言葉ってある?」なんて、ぼんやり聞いてみるのも悪くないだろう。
そういう問いかけが、ある種のやさしさとして、今日もどこかでこっそり機能している。
たとえ、トイレットペーパーがシングルかダブルかという問題だったとしても、である。