小豆は、昔から魔除けになるといわれてきました。小豆の赤い色、神様に供えられてきた背景、体を養う食べ物としての役割。そうした要素が重なり合い、いつの間にか小豆は「守りのある食べ物」として受け取られるようになりました。
この記事では、小豆が魔除けになると言われる理由を整理します。信じ切るほどでもなく、笑い飛ばすほどでもない。中間あたりの立ち位置から眺めてみると、小豆の役割が意外と腑に落ちます。
小豆が魔除けになるといわれる理由6つ
小豆が魔除けになる理由を6つほど、順に掘り下げます。
- 「小豆の赤色が邪気を遠ざける」との発想
- 小豆は神様に供える神聖な食べ物でパワーが強い
(昔は高級食材。祭りや祝いで使われた) - 小豆は栄養価が高く、気を立て直す
- 薬や解毒のイメージが重なった
- 豆そのものの、魔を払う連想
(節分、語感、豆文化) - 食べることで内側から身を守る
小豆の赤色が邪気を遠ざける
小豆が魔除けといわれる理由として、まず挙げられるのが赤い色です。赤は古くから、生命や熱、血、太陽を連想させる色とされてきました。
反対に、穢れは生気を失った状態として捉えられやすく、赤はそれらを遠ざける色だと考えられていたようです。理屈というより、感覚に近い話ですが、人は案外感覚を重視します。
「赤は命の色」=「赤い小豆にはパワーがある」といった理由です。
小豆は神様に供える神聖な食べ物でパワーが強い
昔の小豆は、今ほど気軽に食べられるものではありませんでした。栽培や保存に手がかかり、どちらかといえば特別な場面で使われる食べ物だったようです。
そのため、祭りや祝いの席で神様に供えられる機会も多く、次第に神聖なイメージが重なっていきました。
神様に出すほどの食べ物なら、きっと「魔除けのような、すごい力」もあるだろう――そう思うのは、ごく自然な流れです。
小豆は栄養価が高く、気を立て直す
小豆は栄養価が高く、体を支える食べ物として知られてきました。体調が落ちているときは、気持ちまで沈みがちになります。逆に、体が整うと、気分も少し上向くものです。
実際に、小豆にはビタミンB1が比較的多く含まれ、疲れやすさの軽減に役立ちます。ビタミンB1は、糖をエネルギーに変える働きを支えるため、体のだるさを感じやすい人には欠かせない存在です。
昔は、脚気に悩む人も多かったと聞きます。足が重くなり、力が入りにくくなる症状は、日々の暮らしに直結します。そのため、体調を立て直す食べ物は、単なる栄養源以上の意味を持つため、小豆を食べれば元気になる、つまり、「小豆=魔除け」の図式が浸透したのかもしれません。
あずきは、食物繊維やたんぱく質、ビタミンB群、鉄やカリウムなどのミネラル、サポニンやポリフェノールなど、さまざまな栄養素をバランスよく含んでいます。
薬や解毒のイメージが重なった
中国最古の薬物書とされる神農本草経には、小豆の煮汁が解毒に使われたという記述があります。日本でも、小豆は薬のような位置づけで扱われる場面がありました。
体の中にたまった余分なものを外へ出す。この発想が、目に見えない邪気や悪い影響まで一緒に流してくれる、という考えにつながっていったのでしょう。
豆そのものの、魔を払う連想
節分の豆まきに代表されるように、豆には、魔を払うイメージがあるとされます。
語感として「魔(ま)を滅(めっ)する」=「まめ」と結びつけられたとも言われますが、こちらは半分しゃれのようなものです。それでも、長く続いた習慣は、意味より先に感覚を残します。
豆は魔を遠ざける。そう思われてきた土台の上に、小豆も自然に置かれました。
食べることで内側から守る
「魔除けアイテム」というと、身につけるものや家に置くものを思い浮かべがち。ですが、小豆は少し違い、食べることで体の内側から守る、という発想に近い存在でした。
外から防ぐより、まず自分を整える。派手さはありませんが、どこか現実的で、長く残る理由はそこにあるのかもしれません。

